トップコラム羽田教授のれんけあコラム 連載⑧ ~「医療機関の経営組織の特徴」~

羽田教授のれんけあコラム 連載⑧ ~「医療機関の経営組織の特徴」~

2022-02-02

組織について  今回は医療機関の経営組織の特徴について述べていきます。読者の方で何らかの組織に所属していない方はおられないと思われます。そこで、改めて組織とは何かについて述べていきます。バーナードによれば「組織とは、明確な目的のために2人以上の人々の意識的に調整された活動や諸力の複合体である。」としております。この定義によれば、組織は1人では成立せず、少なくとも2人以上が必要で、明確な目的のため意識的に協働作業が行われる複合的な機関であることを表しています。さらに、①相互に意思を伝達できる人がいて、②それらの人々は貢献しようとする意欲をもって、③共通目的の達成を目指すときに組織は成立する。としており、組織の必要要素は、①伝達(コミュニケーション)、②貢献意欲、③共通目的である。と述べています。 この定義によれば、医療機関は、2人以上の医療従事者が、患者さんの治療を行う目的で、協働作業であるチーム医療によって診療行為を行う組織であると捉えることが出来ます。 2.組織デザイン  全ての組織は、どのような組織構造にするかという問題に直面し、組織の発展に伴い組織の再編成を経験します。個々の組織の発展と外部環境に合わせて組織構造を変えていき、ある組織にとって最適な組織であっても、他組織によっては必ずしも最適な組織ではないことから、組織論においては「唯一最善の組織はない」と言われています。 組織構造は、従来型の組織デザインで分類すると、集権的な組織である職能別組織、分権的な組織である事業部制組織、両者を統合したマトリックス組織があります。 ①職能別組織  職能別組織は、同種の専門的な知識を必要とする職能別に分化され部門化されている組織形態を言います。職能別組織の特徴は、特定の活動に関する職員の知識技能が統合され、専門的な知識や情報の収集と専門家の育成が容易になり、設備や人員の集中利用が可能になり効率化が図れ、組織のために価値のある付加価値の提供が可能になるという特色があります。一方で、トップマネジメントの負担が大きく、職能部門間の調整が大変になり、職能的な専門家は養成されても、各職能を総合する全社的経営者の育成が大変になります。尚、病院の組織デザインは典型的な職能別組織となります。 ②事業部制組織  事業部制組織は、製品別事業部、地域別事業部、市場別事業部などに、業績責任単位としての事業部に分化され、これらの事業部が本社によって全般的に管理されている組織デザインです。一般的に予算損益責任の決定権限が与えられている分権的な組織であり、本社は全体の方針を決定し、事業部に対して各種の経営資源が配分されます。組織運営母体の医療法人の傘下で病院事業、介護事業、クリニック事業などを運営しているものが、ヘルスケア組織の事業部制組織となります。 ③マトリックス組織  職能別組織の垂直的階層のうえに、水平的な影響力、コミュニケーションを重ね合わせた組織デザインで、規模の経済性を追求の要求を満たす職能別組織と、多様化した需要への効果的な対応の要求を満たす事業部制組織のどちらか一方の組織構造で調和が難しくなった時に、一つの解決策としてマトリックス組織が登場します。マトリックス組織は、職能別組織のマネジャーと本部マネジャーが組織内に存在することから職員は両方のマネジャーからの指示を受けることになるための困難が発生する懸念があります。 ヘルスケア組織のマトリックス組織は、例えば医療法人の本部人事部門と病院組織の人事部門が存在するケースがあげられます。この場合病院の人事担当職員は本部人事部門と病院人事部門の両方の管理者からの指示が来ることから問題が発生する場合があります。 <参考文献> C.I.バーナード (1968) 「経営者の役割」ダイヤモンド社 A.D.チャンドラーJr. (2004)「組織は戦略に従う」ダイヤモンド社
羽田明浩

著者

羽田明浩

国際医療福祉大学教授・経営学博士

1986年立教大学経済学部卒、同年三井銀行(現三井住友銀行)入行。2004年国際医療福祉大学勤務(出向)、2008年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA取得)。銀行本部医療機関担当、大手医療法人本部勤務(出向)を経て、2013年立教大学大学院経営学研究科博士後期課程修了・博士(経営学)取得。同年より現職。