トップコラムドクターゴンのれんけあコラム 連載② ~はじめての看取り~

ドクターゴンのれんけあコラム 連載② ~はじめての看取り~

2021-04-15

故郷宮古島で在宅医療を始めて約半年後、はじめて在宅患者を看取ることができた。 救命医時代は一晩に何人もの患者を蘇生し、死亡診断してきたが、在宅看取りは全く勝手が違っていた。徹底した診断治療を行う救命医療の修練を重ねてきた私は、点滴も薬も、一切希望しない看取りには慣れていなかった。たとえ儀式と思っても、心肺蘇生は体に染みついた条件反射のようなものだった。目の前で呼吸停止したオバアに、処置したくなる自分を抑えるのは、大きなストレスだった。 翌日、橋で繋がった来間島のオバアの家に行ってみると、泣き笑いの顔で迎えた家族達から、心からの感謝の言葉を頂いた。お気に入りの着物に着替えて布団に横たわるオバアの表情はとても穏やかで、少し笑っているようにも見えた。救命医時代に、看取って感謝されたことは無い。救命して感謝されることは多かったが、多くは障害と将来への不安を抱えての社交辞令だった。家族に囲まれて人生を卒業するのは、本人にも家族にも最後の幸せなのだろう。
泰川恵吾

著者

泰川恵吾

医療法人鳥伝白川会理事長

平成元年杏林大学医学部卒業。同年東京女子医科大学第二外科入局。東京女子医大救命救急センターICU医長を経て、平成9年から宮古島で訪問診療開始、12年にドクターゴン診療所開設、平成22年に鎌倉診療所を開設。現在、医療法人鳥伝白川会理事長として、宮古島・神奈川の3箇所の診療所で離島僻地医療・在宅医療を展開している。