トップコラムDr.武藤の「ちょっとドキドキ在宅医療」⑪~在宅夫婦割引~

Dr.武藤の「ちょっとドキドキ在宅医療」⑪~在宅夫婦割引~

2022-04-04

横須賀にある衣笠病院グループで訪問診療を週一回行っている。先週、夫婦二人で寝たきりのお宅に訪問診療で伺った。仲良く同じ部屋で、隣合ったベッドで寝ているご夫婦二人を診察し、コロナワクチン接種を行って戻ってきた。 さて在宅の場合は同じ建物の中で同じ日に行う在宅訪問診療は、同一建物減算といって診療報酬が大幅に差し引かれる。居宅の一人の患者さんを訪問したときの在宅患者訪問診療料は888点だが、同じ家屋つまり同一建物に夫婦二人だと、1人目は213点で、二人目は再診料の180点となる。213点と180点、お二人で合計393点と、お一人診たときの888点の半分以下だ。  ご夫婦を訪問診療して帰り道、同行した看護師さんと「夫婦割引なんて厚労省も粋なことをするもんだ」と感心した次第。これから「在宅夫婦割引を宣伝しては」と言う事になった。しかしこの同一建物減算は粋な計らいでもなんでもない。単に同一建物の場合は効率的に訪問診療が行えることから、点数を引き下げたに過ぎない。でも患者さん宅にとっては、1回の訪問で二人とも診てもらえ、さらに自己負担分が減るので大きなメリットだ。  診療報酬はこうした効率性の観点から減算を導入しているケースが数多い。たとえば門前薬局の調剤基本料もその例だ。大型の門前薬局で特定の医療機関から処方箋が大量に集中するような薬局は、調剤の効率性が高いので調剤基本料が16点と安くなっている。一方、厚労省が進めている地域の中の小規模の薬局の調剤基本料は42点と3倍近くもある。このため患者からみると自己負担分は地域の中の小規模の地域の薬局より、門前薬局のほうが安価になる。まるで門前薬局割引のようだ。厚労省は門前薬局よりは地域の薬局を政策的に進めていることから、こうした点数誘導を行っている。しかしヘンな話だ。患者の視点からみれば門前薬局の方が医療機関から近くて便利で、さらに安いということで、患者さんを門前薬局に誘導しているようなものだ。  理由は厚労省の診療報酬の付け方はあくまで医療機関目線で、患者目線ではないからだ。診療報酬をもっと患者さん目線にして、患者さんからサービスや医療機関を選んでもらうような仕組みに変えてはどうだろう?夫婦割引などその最たるものだろう。
武藤正樹

著者

武藤正樹

社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役

社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事 よこすか地域包括ケア推進センター長 1949年神奈川県川崎市生まれ。1974年新潟大学医社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事 よこすか地域包括ケア推進センター長 1949年神奈川県川崎市生まれ。1974年新潟大学医学部卒業、1978年新潟大学大学院医科研究科修了後、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中1986年〜1988年まで当時の厚生省の留学制度でニューヨーク州立大学家庭医療学科留学。1988年厚生省関東信越地方医務局指導課長。1990年国立療養所村松病院副院長。1994年国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長。1995年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉総合研究所長・同大学大学院教授、2013年4月より国際医療福祉大学大学院教授(医療経営管理分野責任者)、2010年より国際医療福祉大学クリニックで外来診療にも携わる。

武藤正樹の著書

病院経営MASTER VOL 9.1

病院経営MASTER VOL 9.1

れんけあ広場のコラム「ちょっとどきどき在宅医療」が一冊に!在宅医療の実践物語。

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