トップコラム羽田教授のれんけあコラム 連載⑦ ~「マーケティングとは」~

羽田教授のれんけあコラム 連載⑦ ~「マーケティングとは」~

2021-12-15

今号は、医療機関のマーケティングについて述べていきます。そもそもマーケティングとは何を意味しているのでしょうか? これについてドラッカーは、顧客が必要として求めている満足を提供すること、と述べています。そしてコトラーは、マーケティングとは人間や社会のニーズを見極めてそれに応えることである。最も短い言葉で定義すればニーズに応えて利益を上げること、と言っております。これらからマーケティングとは、顧客が求めているものに応えること、と捉えることができます。 一方でマーケティングの定義は時代の変化に合わせて変わっており、アメリカ・マーケティング協会(AMA)は以下のようにマーケティングの定義を変更しております。 「マーケティングとは、生産者から消費者もしくは利用者への財の流れを方向づける企業活動の遂行である。」(1960年の定義) 「マーケティングとは、個人や組織の目的を満足させる交換を創出するためのアイデア、財、サービスの概念形成、価格設定、プロモーション、流通を企画し、実行する過程である。」(1985年の定義) 「マーケティングとは、顧客に向けて価値を創造、伝達、提供し、組織と組織をとりまくステークホルダーに有益となるよう顧客とも関係性をマネジメントする組織の機能および一連のプロセスである。」(2004年の定義) 「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。」(2007年の定義) このようにマーケティングの定義は時代が進むにつれて変わっています。最も新しい定義は、ステークホルダー(組織の利害関係者等)を含んだ社会全体にとって価値のある提供物を創造し、伝え、配達し、交換する一連の制度とプロセスであると述べています。 これらから、読者の皆さんのマーケティングは、利害関係者であるステークホルダーにとって地域医療ニーズに合致した価値のあるサービスを提供すること、と捉えることが出来ます。 すべての市場で競争するのではなく、自施設が効果的に事業展開できる可能性がある魅力的市場を見出したうえでターゲットを絞り込む必要があります。ターゲットを絞り込んでのマーケティング(ターゲット・マーケティング)のプロセスでは、市場を細分化(セグメンテーション)して分析したうえで、参入すべき領域を絞り込み(ターゲティング)、その領域における競合企業との違いを打ち出す(ポジショニング)を明確にします。市場をどのように定義するか、その市場をどのように細分化して自施設の強味を発揮するかの戦略が重要になってきます。 このターゲット・マーケティングは3つの頭文字(S、T、P)をとって「STPマーケティング」と呼ばれます。 S: 市場セグメンテーション 市場のセグメンテーションには、居住地によって分類する「地理的セグメンテーション」、年齢構成によって分類する「人口動態的セグメンテーション」、ライフスタイル等によって分類する「心理的セグメンテーション」、購買頻度・使用状況等によって分類する「行動的セグメンテーション」があります。 T: 市場ターゲティング セグメンテーションの結果を受けて、自施設が参入すべき領域を絞り込む段階に移ります。それぞれのセグメントの市場機会と魅力度を評価することで、どのセグメントに向けたマーケティング活動を行うのかを決定します。 P: ポジショニング戦略の立案 ターゲットとするセグメントを決定したら、標的セグメントにおいて、自施設の医療サービスとイメージが認識されるよう、ポジショニングする必要があります。企業が自社の提供物とイメージが標的市場で特有の位置を占めるように戦略を練ることと同様です。 プロモーション活動について  医療機関の提供する医療サービスを人々に知ってもらい、利用機会を促すプロモーション活動として「プッシュ戦略」と「プル戦略」が挙げられます。 プッシュ戦略は「押し出す」戦略であり、医療機関では、患者紹介を促すために近隣の他施設を訪問する前方連携の推進や、さまざまな医療教室やセミナーを開催することで自施設への来院を促すことが相当します。 プル戦略は「引き込む」戦略であり、広告やインターネットのホームページによって自施設を地域の患者さんに知ってもらい、来院誘因を図ることが相当します。 ほとんどの医療機関が行っている医療提供サービスに関して、マーケティング理論を用いて述べました。医療機関が行っている地域社会にとって価値のある医療を提供することは、2007年のマーケティングの定義であり、医療施設が立地する地域の方々を対象として、得意とする診療領域によって他施設との何らかの違いを打ち出していることはSTPマーケティングを行っていることに他なりません。 ・ドラッカー(2001)『マネジメント』ダイヤモンド社. ・コトラー&ケルナー(2014)『マーケティング・マネジメント』丸善出版. ・羽田明浩(2017)『ナースのためのヘルスケアMBA』創成社.
羽田明浩

著者

羽田明浩

国際医療福祉大学教授・経営学博士

1986年立教大学経済学部卒、同年三井銀行(現三井住友銀行)入行。2004年国際医療福祉大学勤務(出向)、2008年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA取得)。銀行本部医療機関担当、大手医療法人本部勤務(出向)を経て、2013年立教大学大学院経営学研究科博士後期課程修了・博士(経営学)取得。同年より現職。