トップコラム羽田教授のれんけあコラム 連載⑤ ~「ダイナミック・ケイパビリティを活用したパラダイムシフトへの対応」~

羽田教授のれんけあコラム 連載⑤ ~「ダイナミック・ケイパビリティを活用したパラダイムシフトへの対応」~

2021-07-19

軍事用語である「戦略」が経営戦略論として登場したのは1960年代のアメリカで、企業の中長期的な目標と取るべき行動の選択等が述べられたことが背景にあります。登場から50年程の間に経営戦略論は各年代で新たな理論が登場しています。1970年代は、多角化に伴う資源配分が注目され、経営戦略は事業ポートフォリオのマネジメントという新しい内容を付け加えることになりました。 1980年代は、同業他社との競争を強く意識するようになり、同業市場において独自の立場を確保することの重要性が認識されることになりました。さらの企業は独自の競争優位性の構築を図り同業他社との競争のための戦略である競争戦略が必要になりました。 1990年代に入ると、企業経営の方向性は個々の企業が保有する経営資源に着目されるようになりました。 2000年代に入ると、1990年代以降の資源ベースアプローチに基づく研究が行われるようになり、その流れを背景としつつ、組織が環境変化を乗り越えて競争優位を獲得して持続できるような能力である「ダイナミック・ケイパビリティ」と呼ばれる研究が注目されるようになりました。 それでは、経営戦略理論の新しい理論であるダイナミック・ケイパビリティとはどのような理論でしょうか。 ダイナミック・ケイパビリティとは、企業独自の内部経営資源を継続的に創造・拡張・改良・保護し、価値ある状態に維持するために利用するものであり、機会・脅威を感知し機会を活かす能力と、企業の有形・無形資源を向上し、必要時には再構築することで競争力を維持する能力のことと述べております。 つまり経営組織を取り巻く外部環境変化の機会と脅威を読み取り、自組織が保有する内部経営資源を適切に活用することで競争力を向上していく経営能力ということを意味しております。  社会保障制度改革国民会議の報告書は、「病院完結型」から、地域全体で治し支える「地域完結型」への移行と、受け皿となる地域の病床や在宅医療・介護の充実と川上から川下までのネットワーク化による医療機能分化の進展と、地域包括ケアスステムの推進を述べております。そして、これらに基づき地域医療構想が策定されていますが、これら一連の動きは、医療業界におけるパラダイムシフトと見ることが出来ます。 このような医療機関を取り巻くパラダイムシフトにおいて、自院にとっての脅威と機会を読み取ったうえで、保持する内部経営資源を向上し活用していくというダイナミック・ケイパビリティを大いに活用する必要があります。 このダイナミック・ケイパビリティは、自社組織内に足りない経営資源を組織外部に求めるアライアンスやシナジーの期待においても発揮されます。 地域医療構想において医療機能分化によってお互いの診療機能を補完し合う体制を構築する過程で経営トップによるダイナミック・ケイパビリティが発揮されるものと捉えることが出来ます。
羽田明浩

著者

羽田明浩

国際医療福祉大学教授・経営学博士

1986年立教大学経済学部卒、同年三井銀行(現三井住友銀行)入行。2004年国際医療福祉大学勤務(出向)、2008年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA取得)。銀行本部医療機関担当、大手医療法人本部勤務(出向)を経て、2013年立教大学大学院経営学研究科博士後期課程修了・博士(経営学)取得。同年より現職。