トップコラムドクターゴンのれんけあコラム 連載④ ~救命救急の限界~

ドクターゴンのれんけあコラム 連載④ ~救命救急の限界~

2021-06-15

救命救急センターに勤務するうちに、何度も搬送され、集中治療の末に転院、退院を繰り返す患者が増えてきた。その多くが意識は無く、家族も心から助けて欲しいと望んでいない様に思えた。誰も希望しない延命を何度も繰り返すのは、救命救急センターでは日常である。 私には死んで良い命は存在していないと思えた。心停止をいかにさせないか、徹底した分析と、それに基づいた治療、それが私の全てだった。人工臓器の発達により、緊急時に使える人工心肺が現場で使用可能となってから、私の信念に迷いが生じるようになった。 人工心肺が動いている限り、心肺停止の診断はできない。無呼吸テストが必要な脳死判定すらできない。人工心肺回路が使用不能となるか、誰かがスイッチを切るまでは死なないのである。元々、心肺停止に使うための装置である。その適応は、診察開始から瞬間的に決めなくてはならない。 患者にも家族にも大きな負担を強いるこの技術が普及した時、人はいつ死ぬのか、と、本気で考えるようになった。
泰川恵吾

著者

泰川恵吾

医療法人鳥伝白川会理事長

平成元年杏林大学医学部卒業。同年東京女子医科大学第二外科入局。東京女子医大救命救急センターICU医長を経て、平成9年から宮古島で訪問診療開始、12年にドクターゴン診療所開設、平成22年に鎌倉診療所を開設。現在、医療法人鳥伝白川会理事長として、宮古島・神奈川の3箇所の診療所で離島僻地医療・在宅医療を展開している。