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Dr.武藤の「ちょっとドキドキ在宅医療」⑰ ~コロナで変わる「かかりつけ医」制度~
2022-10-03
今年度になって、かかりつけ医の議論が活発化している。まず今年5月の財務省財政制度等審議会が取りまとめた春の建議の中で「かかりつけ医の認定制度」の提案や、6月の政府の「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針2022)」でも、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」と明記された。
こうした背景にはコロナ禍でまるで機能しなかった「かかりつけ医」の課題がある。2022年6月15日、政府の「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」(座長:永井良三・自治医科大学学長)が取りまとめた報告の中でも以下のように述べている。「コロナ禍において外来医療や訪問診療においてかかりつけ医がコロナに対して組織的に関わる仕組みもなく、その機能を果たせなかった。今後、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行うことが重要である」。
さて9月に著者は、こうしたコロナとかかりつけ医を巡った一連の課題について、「コロナで変わる『かかりつけ医』制度」(ぱる出版)を出版した。内容としては、コロナで変わる日本の外来、コロナとかかりつけ医、海外の家庭医事情、かかりつけ医とDX、そして近未来のかかりつけ医制度のための10のポイントについて分かりやすく解説した。
実は筆者にはかかりつけ医制度に思い入れがある。日本でかかりつけ医の制度化の議論は、今から35年も前の1987年に当時の旧厚生省に設けられた「家庭医に関する懇談会」(家庭医懇)からスタートする。この家庭医懇は有識者や日本医師会(日医)の幹部で構成されて、米英の家庭医を念頭に議論が行われた。しかし家庭医懇は、日医の大反対で失敗に終わる。理由は、日医が「(厚生省が)、英国の家庭医(GP)のような国家統制の強い仕組みに変えるのではないか?」と大反発したためだ。
こうして我が国では家庭医構想はとん挫し、その後「家庭医」という言葉も使われなくなり、日医の「かかりつけ医」が定着する。実は著者はこの頃、旧厚生省の留学で米国ニューヨークでの家庭医留学を経験した。しかし家庭医懇の失敗のおかげで帰国後、「家庭医で留学しました」などとは口にすることもできず、留学経験も全く活かすことはできなかった。
本書では35年前に米国の家庭医療科のレジデントたちと共に経験した家庭医養成プログラムの体験記も書き留めた。また米英仏独の家庭医養成やその制度の比較も行っている。そして我が国への導入するに当たってのポイントについても述べている。本書がかかりつけ医の制度の議論の一助となれば幸いである。

著者
武藤正樹
社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事 よこすか地域包括ケア推進センター長 1949年神奈川県川崎市生まれ。1974年新潟大学医社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事 よこすか地域包括ケア推進センター長 1949年神奈川県川崎市生まれ。1974年新潟大学医学部卒業、1978年新潟大学大学院医科研究科修了後、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中1986年〜1988年まで当時の厚生省の留学制度でニューヨーク州立大学家庭医療学科留学。1988年厚生省関東信越地方医務局指導課長。1990年国立療養所村松病院副院長。1994年国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長。1995年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉総合研究所長・同大学大学院教授、2013年4月より国際医療福祉大学大学院教授(医療経営管理分野責任者)、2010年より国際医療福祉大学クリニックで外来診療にも携わる。
武藤正樹の著書

