トップコラムドクターゴンのれんけあコラム 連載⑩ ~初めての訪問診療~

ドクターゴンのれんけあコラム 連載⑩ ~初めての訪問診療~

2022-02-22

診療所の自動ドアが開く音を聞くたび、大学病院で着慣れた詰襟の白衣を羽織って玄関に出向かえた。しかし、殆どは遠い親戚や両親の知人達だった。 開業祝いの言葉や花は有難いと思ったが、患者は全く来なかった。慣れないレセプトや経理の書類を整理し、自作した電子カルテの整備をするうちに夜になった。空腹を満たすために街に出てビールを引っかけて手術台で寝ていると、午前0時を過ぎた頃に飲み屋を閉めた熟年の姉さんや、点滴希望の酔っ払いが時々入って来る。ヒマなので、朝まで診察してまた朝の外来を待った。 在宅医療の申し込みがあったのは、昼休みのつもりでたまたま訪れた、旧知のダイビングショップに来ていた東京からの移住家族だった。90才近い父親を診てくれと頼まれ、天にも昇る気持ちだった。 その後、数日の間に数件の訪問診療申し込みがあったが、そのどれもが前医に見捨てられたとか、医者を信じない親の診察をたにみたいなど、難しい患者たちだった。 新宿で救急医療をこなしてきた俺にとって、それは望むところだった。白衣は脱いで、愛車ミゼットⅡに乗り込んで島を廻った。   筆者プロフィール   泰川 恵吾(やすかわ けいご) 医療法人鳥伝白川会 理事長 ドクターゴン診療所  平成元年杏林大学医学部卒業。同年東京女子医科大学第二外科入局。東京女子医大救命救急センターICU医長を経て、平成9年から宮古島で訪問診療開始、12年にドクターゴン診療所開設、平成22年に鎌倉診療所を開設。現在、医療法人鳥伝白川会理事長として、宮古島、神奈川の3箇所の診療所で離島僻地医療・在宅医療を展開している。
泰川恵吾

著者

泰川恵吾

医療法人鳥伝白川会理事長

平成元年杏林大学医学部卒業。同年東京女子医科大学第二外科入局。東京女子医大救命救急センターICU医長を経て、平成9年から宮古島で訪問診療開始、12年にドクターゴン診療所開設、平成22年に鎌倉診療所を開設。現在、医療法人鳥伝白川会理事長として、宮古島・神奈川の3箇所の診療所で離島僻地医療・在宅医療を展開している。