トップコラムちょっとドキドキ在宅医療㉔ 訪問看護の薬剤倉庫

ちょっとドキドキ在宅医療㉔ 訪問看護の薬剤倉庫

2023-04-14

訪問診療では、患者さんの突然の発熱に備えて、抗菌剤をあらかじめ処方しておくことがある。そしてそれを冷蔵庫など分かりやすい場所に置いてもらう。在宅診療はチームで行っているので、誰が訪問しても緊急薬の場所が分ることが必要なので備蓄場所を共有している。ときどきこの緊急薬がなくなっているのが分って大慌てすることがある。 訪問看護でもこうした薬剤にまつわる困った事例が多い。2023年3月に内閣府の規制改革推進会議の医療介護感染症対策ワーキンググループでは以下のような事例が報告された。訪問看護師が経験した突然の発熱、脱水、疼痛のケースだ。高齢者の発熱で、おそらくは尿路感染が疑われる発熱であったが、土曜日の夜で薬局もやっていない。このためかかりつけ医も薬の処方ができず、結局、患者は病院に救急搬送されたという。またがん性疼痛に苦しむ患者で、オピオイド、レスキューが足りなくなったケースだ。薬局に電話で連絡したら「明日以降なら対応できます。数日かかるかもしれません」と言われて「思わず涙が出た」という。これに対して日本薬剤師会のある委員は「医師から包括的な指示があれば、必要な薬剤は事前に処方、調剤しておくことだ。無ければOTC薬を活用することも可能だ」という。このあまりの当事者意識のなさに患者団体からは「患者が痛くて困っているのに、医療側の目線が強くて、患者目線が後回しだ」との非難の声が出る始末だ。薬剤師は休日夜間の緊急時に訪問診療や訪問看護で医薬品がないことの大変さを一度、経験して見れば良いと思う。 とくに訪問看護ステーションには医薬品といっても、イソジン、白色ワセリン、グリセリン浣腸、注射用水、オリーブ油ぐらいしか置くことが出来ない決まりだ。それに訪問看護ステーションでも行う医療処置が増えている。褥瘡処置、膀胱留置カテーテル交換、経鼻胃管交換、輸液、気管カニューレ交換など。こうした処置には医薬品が必要だ。また最近では看護特定行為の研修修了生も訪問看護ステーションに配置されるようになった。特定行為では輸液や薬剤の調整についても看護師が行うことを認めている。それにもかかわらず医薬品が訪問看護ステーションになければ特定行為の看護師も宝の持ち腐れだ。 このためこうした医薬品や医療材料を訪問看護ステーションで在庫できれば問題は一挙に解決だ。このため規制改革推進会議では訪問看護ステーションにおける薬剤配備の検討を始めた。方法としては二つ。A案では訪問看護ステーションに連携薬局の遠隔倉庫を作ること、B案では連携医療機関の遠隔倉庫を作ることだ。A案ではオンラインで薬剤師が遠隔管理し、医薬品の授与を行う。またB案では医薬品の安全使用のための業務手順書を用いて管理するとなっている(図)。ぜひとも訪問看護ステーションの遠隔薬剤倉庫を実現したいものだ。 武藤正樹(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役 よこすか地域包括ケア推進センター長  1949年神奈川県川崎市生まれ。1974年新潟大学医学部卒業、1978年新潟大学大学院医科研究科修了後、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中1986年〜1988年まで当時の厚生省の留学制度でニューヨーク州立大学家庭医療学科留学。1988年厚生省関東信越地方医務局指導課長。1990年国立療養所村松病院副院長。1994年国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長。1995年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉総合研究所長・同大学大学院教授、2013年4月より国際医療福祉大学大学院教授(医療経営管理分野責任者)、2010年より国際医療福祉大学クリニックで外来診療にも携わる。 政府委員としては、医療計画見直し等検討会座長(厚労省2010年〜2011年)、中央社会保険医療協議会調査専門組織入院医療等の調査評価分科会会長(厚労省2010年〜2018年)      著書に「よくわかる病院の仕事のしくみ」(ぱる出版2007年) 「2025年へのカウントダウン~地域医療構想と地域包括ケアはこうなる!」(医学通信社2015年)など多数。
武藤正樹

著者

武藤正樹

社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役

社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事 よこすか地域包括ケア推進センター長 1949年神奈川県川崎市生まれ。1974年新潟大学医社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事 よこすか地域包括ケア推進センター長 1949年神奈川県川崎市生まれ。1974年新潟大学医学部卒業、1978年新潟大学大学院医科研究科修了後、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中1986年〜1988年まで当時の厚生省の留学制度でニューヨーク州立大学家庭医療学科留学。1988年厚生省関東信越地方医務局指導課長。1990年国立療養所村松病院副院長。1994年国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長。1995年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉総合研究所長・同大学大学院教授、2013年4月より国際医療福祉大学大学院教授(医療経営管理分野責任者)、2010年より国際医療福祉大学クリニックで外来診療にも携わる。

武藤正樹の著書

病院経営MASTER VOL 9.1

病院経営MASTER VOL 9.1

れんけあ広場のコラム「ちょっとどきどき在宅医療」が一冊に!在宅医療の実践物語。

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