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ちょっとドキドキ在宅医療 老健の医療ショート
2023-08-01
横須賀にある衣笠病院で週2回外来を担当している。熱暑日が続いたある日、外来に一人暮らしの80歳台の高齢女性が「食欲がない、食事の支度をする気力もない」と訪れた。検査をするとやはり軽度の脱水がある。悪化を防ぐにも一時的な入院が必要だと思い地域包括ケア病棟のベッドを聞いたら全く空きがないという。「そうだ老健の医療ショートがある」と思って、病院併設の老健に聞いたがやはり空床がない。結局、経腸栄養剤3日分を処方して在宅で経過をみることにした。
7月の社会保障審議会介護給付費分科会ではこうした老健の医療ショートについて議論が行われている。老健の医療ショートは2021年介護報酬改定で導入された。正式名称は「総合医学管理加算」(1日当たり275単位、7日間算定)で、医療的なケアが必要な利用者をかかりつけ医からの紹介を受けて老健で緊急に受け入れる仕組みだ。この加算導入の背景は、ケアマネジャーを対象としたショートステイの調査がある。調査ではショートステイで要望が高いのは「医療ニーズに対応した緊急の受け入れ」がトップで、次いで「レスパイトケア」、そして「医療ニーズに対応した計画的な受け入れ」の順であった。こうした要望を受けて「総合医学管理加算」が創設された。
しかしその算定実績は極めて少ない。介護給付費分科会で算定状況は利用者の1%程度、事業所も50件程度と極めて低調なことが明らかになった。一方、受け入れた疾患名を見ると、上位5位は、肺炎、認知症、骨粗しょう症、尿路感染、脱水の順だった。
総合医学管理加算が低調な理由は、医療機関側が老健の医療ショートの仕組みを知らないことが主な原因だ。なんと7割の医療機関がこの加算の存在を知らないという。このため介護給付費分科会では、まず「医療機関への周知」を求める声が相次いだ。その他、老健側としては「加算を取得しても、検査投薬などのコストを賄いきれない」。このため「区分支給限度基準額の範囲から、医療対応部分を除外してはどうか?」と言う意見も出た。また「老健では医療ショートの専用ベッドはなく、空きベッドで対応していることが影響している」と言う意見も聞かれた。
2025年、著者もその一員である団塊の世代800万人が後期高齢者となる。そのとき急性期病床の7割は後期高齢者で埋め尽くされる。いよいよ後期高齢者の入院パンデミックの時代の始まりだ。こうした事態に備えて後期高齢者の軽症、中等度救急の緊急入院は地域包括ケア病棟で受け入れるほか、老健の医療ショートを活用すべきだ。
訪問診療でも、老健の医療ショートはありがたい。一人住まいの高齢者の熱中症による脱水でも、老健の医療ショートを気軽に利用できる体制が欲しい。
社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事 よこすか地域包括ケア推進センター長
1949年神奈川県川崎市生まれ。1974年新潟大学医学部卒業、1978年新潟大学大学院医科研究科修了後、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中1986年〜1988年まで当時の厚生省の留学制度でニューヨーク州立大学家庭医療学科留学。1988年厚生省関東信越地方医務局指導課長。1990年国立療養所村松病院副院長。1994年国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長。1995年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉総合研究所長・同大学大学院教授、2013年4月より国際医療福祉大学大学院教授(医療経営管理分野責任者)、2010年より国際医療福祉大学クリニックで外来診療にも携わる。
政府委員としては、医療計画見直し等検討会座長(厚労省2010年〜2011年)、中央社会保険医療協議会調査専門組織入院医療等の調査評価分科会会長(厚労省2010年〜2018年)
著書に「よくわかる病院の仕事のしくみ」(ぱる出版2007年) 「2025年へのカウントダウン~地域医療構想と地域包括ケアはこうなる!」(医学通信社2015年)など多数。

著者
武藤正樹
社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事 よこすか地域包括ケア推進センター長 1949年神奈川県川崎市生まれ。1974年新潟大学医社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事 よこすか地域包括ケア推進センター長 1949年神奈川県川崎市生まれ。1974年新潟大学医学部卒業、1978年新潟大学大学院医科研究科修了後、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中1986年〜1988年まで当時の厚生省の留学制度でニューヨーク州立大学家庭医療学科留学。1988年厚生省関東信越地方医務局指導課長。1990年国立療養所村松病院副院長。1994年国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長。1995年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉総合研究所長・同大学大学院教授、2013年4月より国際医療福祉大学大学院教授(医療経営管理分野責任者)、2010年より国際医療福祉大学クリニックで外来診療にも携わる。
武藤正樹の著書

